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健康福祉委員会(平成18年5月〜)

平成18年6月27日

【渡会克明委員】
 2004年からの大学卒業後の臨床研修の必修化に伴い、地方の医者不足が深刻化していると言われている。地方の病院で臨床研修を希望する者が少なく、大学病院が派遣先である地方の病院から医師を引き揚げる措置を取るため、地方病院の小児科・脳外科・眼科・産婦人科などがなくなる事態が生じている。
 しかし、こういった状況は他県の話であり、本県は名古屋を有する大都市圏であり、東京、大阪に次ぐ医療サービスが受けられるという認識でいた。
 ところが、昨年9月に愛知県の行った医師不足に関するアンケート結果の中間集計によると、医師不足で困っているという回答が351件中63件の18パーセントあり、2次医療圏の内訳でみると名古屋は140件中21件、海部は12件中1件、尾張中部は6件中2件、尾張東部は19件中0件、尾張西部は21件中11件、尾張北部は25件中5件、知多半島は19件中4件、西三河北部は22件中3件、西三河南部は40件中8件、東三河北部は6件中1件、東三河南部は41件中7件であり、この結果から見ると他人事ではない。
 愛知県地域保健医療計画の中に、県民の多様な保健医療需要に対応し、健康増進から疾病予防・治療・リハビリ・在宅ケアに至る一貫した保健医療サービスが、いつでも、どこでも、だれでもが、適正に受けられる包括的保健医療提供体制の確立を目指すとある。
 しかし、現実には地域間格差は広がっている。かつ、診療科の偏在まで起きている。そこで、格差是正を期待しつつ質問する。
 まず、医療法でいうところの2次医療圏の定義とは何か。

【医療福祉計画課主幹(計画)】
 医療法では、1次医療及び2次医療があり、1次医療はいわゆる通常の通院医療、2次医療は入院医療をいい、2次医療までをカバーするのが2次医療圏で、2次医療圏でほぼ医療が完結するという考え方である。
 ただ、交通などの諸事情も相まって、医療圏をまたがって一つの診療広域を形成するという問題が現実に起きている。国はこういった事情を考慮に入れ、地域で連携して行う診療体系についての考え方を若干変えてきている。また、2次医療圏は、必要とされるベッド数を考慮した考え方である。

【渡会克明委員】
 東三河北部医療圏は、2次医療圏という定義を満たしているのか。

【医療福祉計画課主幹(計画)】
 人口規模約6万5,000人で、県内最小人口の医療圏である。病院数は、6病院で尾張中部医療圏に同じである。現時点では医師不足の問題もあるが、2次医療圏として位置付けている。救急体制など、医療圏を越えた問題があることは認識している。

【渡会克明委員】
 救命救急などを行う際、医療圏という考え方が邪魔になるのであればやめたほうがいい。
 別の観点から質問するが、医師不足と言われているが、全国では毎年8,000人が医師になっている。本県の過去5年間の医師数の推移はどうか。

【医務国保課長】
 厚生労働省が実施している医師・歯科医師・薬剤師調査では、平成14年末現在、愛知県では1万2,307名の医師が勤務している。平成16年末では1万2,577名で、270名増である。増加の内訳は、病院勤務が111名、診療所勤務が159名である。

【渡会克明委員】
 愛知県では、医師数は減っていない。では、増えた医師はどこに行ったのか。
 県内の大学、病床数、医師数について把握しているデータを教えてほしい。

【医務国保課長】
 現在、県内348病院について医師数の調査を行っている。個別具体的な数字については、その調査結果を待ってほしい。

【渡会克明委員】
 名古屋を中心とした大きな病院には、研究医も含め医師数は多いと思うか。

【健康担当局長】
 愛知県では医師は増えているが、増加した要因には女性医師の増加が考えられるが、実際に勤務している医師の実態を見なければ分からない。医師の家族の生活等の問題もあり、一部の地域へ医師が集中していることは認識している。

【渡会克明委員】
 女性医師の問題は重要な問題である。
 関連することで、開業していた医院を廃業した医師が新城市民病院の産婦人科に勤務を引き受けてもらったという話を聞いた。このことは承知しているのか。また、どのように思うか。

【医務国保課長】
 委員指摘の件については、今年の5月から勤務している旨、病院から報告を受けている。そういった努力に対しては敬意を表するものである。我々からも各病院には産婦人科の医師の派遣の要請をしたところであるが、県内の医学部を有する4大学とも難しい状況である旨の回答を得た。医師確保支援委員会の中でも、産婦人科を始めとした医師の派遣について要請しているところである。

【渡会克明委員】
 大学の学部長や病院長を入れた検討会議や医師会に委託しているドクターバンクがあることは承知しているが、派遣している側の病院の医師を集めたところで、土台無理なことは明白である。うまくいっている具体的な事例があれば教えてほしい。

【医務国保課長】
 ドクターバンク事業について、大学関係では人材が少ないことは承知している。主なターゲットは、結婚や子育てにより大学との関係から遠ざかっている女性医師や、県外から県内病院に就職を希望している医師を対象に登録者を増やしていきたいと考えている。

【渡会克明委員】
 女性医師の件も含めた医療サービスの充実を図ってほしい。
 平成17年度臨床研修に関する調査の研修2年次生分中間報告書では、研修2年次生の臨床研修修了後の予定について、大学病院で勤務・研修予定が48.6パーセント、市中病院で勤務・研修予定が38.2パーセントとなっている。臨床研修終了後に、専門とする診療科目を決めているかという問いに対して、86.2パーセントが診療科目を決めている。30くらいある診療科目からの内訳は、内科が14.4パーセント、外科が8.5パーセント、小児科が8.4パーセント、整形外科が6.5パーセント、麻酔科が6.4パーセントなどであり、8番目に産婦人科が4.8パーセントとなる。小児科や産婦人科を選んだ理由として最も多いのが、やりがいがあるからということである。
 臨床研修終了後の進路について、大学病院で臨床研修を行った者では76.3パーセント、臨床研修病院で臨床研修を行った者では28.9パーセントが大学病院で勤務や研修をする一方で、大学病院で臨床研修を行った者で、研修修了後に市中病院で勤務や研修を行う者は12.1パーセントである。しかし、最初から臨床研修病院で臨床研修を行った者は、57.7パーセントが市中病院に勤務する。
 本県における就職先など分かれば教えてほしい。

【医務国保課長】
 現在行っている調査の中間報告ということでは、回答のあったのは348病院中258病院で、そのうち3年次の後期研修を受け入れたのは36病院、受入医師数は363名である。うち22病院、312名はいわゆる500床以上の大規模病院である。診療科については集計精査していない。

【渡会克明委員】
 その後のことをしっかりフォローしてほしい。
 真に地域医療に責任を持つのは、大学病院ではなく行政しかない。本県はがんセンターという立派な病院もあり、いい病院には人材も集まるはずである。県として医師をプールすることはできないかもしれないが、リーダーシップを発揮する、調整役を担うことは可能である。
 医療研修推進財団や医師派遣会社などの民間による医師派遣を否定するものではないが、地域の実情を理解して、責任ある立場で医師派遣ができるのは行政、県で行う医局であると思うがどうか。

【健康担当局長】
 これまでは地域医療への医師派遣は医局の役割であった。医師不足で医局に医師が引き揚げられると地域医療や政策医療が成り立たなくなるということは十分認識している。4大学学部長には、地域医療の確保ということの重要性について認識してもらった。診療報酬の改定など、制度の多くが国の制度に基づいており、県として国にしっかり要望し実現を図っていく。
 医局については改めるべき所は改める必要はあるが、まだまだ役割を果たせるという意見もある。
 県に医師を集めて派遣する医局制度は、制度的には難しい。県立病院にいったん医師を集めて、政策医療に対応したらどうかという議論が国でもあったが、なかなか実現は難しいと聞いている。県として、ドクターバンクや女性医師の現場復帰のためのリフレッシュ研修などを考えているが、国に要望するものと県でやるものをしっかり見極めながら対応していきたい。

【渡会克明委員】
 県による医局制度は非現実的なことではなく、地域の医療に県が更にかかわることにより向上するのであればそれは正解である。医療訴訟の問題への対応、中小病院に勤務した場合に有利に処遇するなど働きやすい環境づくり、少しでも先の見える施策を実施してほしい。




平成18年10月2日

【渡会克明委員】
 子育て支援対策について尋ねる。
 少子化対策に特効薬はなく、社会全体で支援する仕組みづくりが大切であると思う。その中で愛知県として何ができるかを考え、一つ一つできることから行うことが大切である。
 そこでまず、今議会の一般質問においても質疑があったところだが、今年度内に制定する少子化対策条例の進ちょく状況について、もう少し詳しい説明を求める。
 また、10月から法が施行となった認定こども園について、県内でオープンした所はあるのか。これに関する幼稚園や保育所からの問い合わせ状況はどうか。そしてその対応の状況はどうか。

【子育て支援課長】
 少子化対策条例の制定に向けては、先の6月議会での知事答弁を受け、県庁内で「愛知県の少子化対策における今後の施策の考え方」の素案を作成し、9月5日に開催した次世代育成支援有識者会議でその検討を行った。その結果を踏まえ、パブリックコメントを9月26日から10月25日まで実施しているところである。このパブリックコメントにより得られた県民の意見を十分に踏まえ、再度次世代育成支援有識者会議において検討を行い、「愛知県の少子化対策における今後の施策の考え方」をまとめ上げていきたいと考えている。この考え方を基に条例案を作成していくこととなり、年度内の議会に上程したいと考えている。

【子育て支援課主幹(保育・育成)】
 認定こども園については県内で認定こども園として認定した所は現在のところ1か所もない。
 相談状況は厳密に集約していないが、およそ5・6件ほどである。相談内容については単純なものからかなり具体的なものまで熟度に差があるので、相談件数ととらえるかどうかの幅を広げて考えれば少し件数が増えるかもしれない。
 対応については基本的には子育て支援課で行っているが、認定こども園は幼稚園をベースにしたものと保育所をベースにしたものがあるので、現実としては私立で幼稚園型のものであれば私学振興室に相談に行ったり、保育所型であれば市町村に直接相談する場合がある。このため28日に市町村の認定こども園担当者会議を開催し、対応の状況を報告するよう周知を行ったところである。

【渡会克明委員】
 条例の制定については名古屋市も含め市町村も関心を寄せているので、こちらの対応についてもよろしくお願いしたい。認定こども園についても丁寧な対応をお願いしたい。
 次に、先日東京都渋谷区にある児童総合センターこどもの城に調査に行ったので関連して質問する。本県においても7月15日に愛・地球博公園内に児童総合センターがリニューアルオープンした。このセンターは児童の健全育成を目的として、大規模な遊具を使用した遊びの体験の場であると認識しているが、子育て支援ができる場となっているのか。また、こどもの城を調査して広報が重要であると感じたが、広報はどのように行っているか。特に外国人に対する広報はどうしているか。

【子育て支援課長】
 県の児童総合センターは平成8年7月に開館しており、開館以来10年が経過した。今回のリニューアルオープンに当たっては、開館当時のコンセプトを生かしながら遊具の再配置を行い、新たに子育て広場とコラボレーションコーナーを設置している。子育て広場は小さな子どもとお父さんやお母さんのくつろぎのスペースであり、子育て相談やセミナー、親子のプログラムなどの実施を計画している。コラボレーションコーナーは児童の健全育成や子育て支援に係る様々な機関・NPO・ボランティアなどとの協働スペースとして活用していく。
 広報については従前から行っていることであるが、情報誌あのねっとを年2回、1万5,000部発行して県内保健所・児童相談センター・県民生活プラザ・市町村・児童館・小学校などに配付したり、またホームページによる広報などを行っている。県外の関係機関などとも情報交換は適宜行っているところである。
 外国人に対する広報については、特に外国人に限ってということは行っていない。全体の広報の中で検討していきたい。

【渡会克明委員】
 県外に誇れるような、また県内においても子育てのネットワークの構築に貢献するような施設として活用されるよう要望する。
 次に、6月定例会に引き続き医師確保対策について尋ねる。
 8月31日に国から新医師確保総合対策が示された。これによると東北や近県の岐阜県などは医師不足県という認識があるが、本県についてはそういった認識はない。医師の絶対数では平成6年及び平成16年において全国5位、勤務医の絶対数も平成6年及び平成16年において5位で、医師は多いという認識である。
 ところが愛知県は国の縮図と言われるが、人口10万人当たりの医師数という観点から見てみると、平成6年が37位、平成16年でも36位となっている。人口10万人当たりの勤務医数でも平成6年が38位、平成16年が37位である。こうした状況は埼玉県も神奈川県も同じである。つまり医師が都市に集中するということである。国の推計によると平成34年には医師数の需要と供給が均衡し、マクロ的には医師数が充足することとなる。しかし、絶対数が増えても人口10万人当たりの医師数が増えなくては県民に対するサービスは向上しない。
 平成16年から臨床研修制度が始まっており、後期レジデントが終われば医師が出てくるという話を聞いているが、少し心配である。大学病院がレジデントを指導するため周辺の医師を引き上げるなどしており、本県においても地域の公的病院は医師が少なくなっている。
 先の6月議会の委員会において、病院の医局ではなく県がリーダーシップを執るような医師派遣ができないか尋ねたところであるが、県がリーダーシップを執る一つの場が医療対策協議会である。そこでまずこの医療対策協議会は過去何回行われ、そこで何が議論され、現時点でどうしようとしているのか尋ねる。

【医務国保課長】
 本県では医療審議会の医療対策部会を医療対策協議会に充てることとしており、医療対策部会は年2回、9月と3月に開催している。9月の会議では、従前から課題となっており、また新医師確保総合対策にも盛り込まれている産科・小児科の集約化の問題について意見を聞くとともに、その前に開かれた小児科医や産科医の確保に向けた委員会での検討状況を報告した。それらの委員会においては、将来的には集約化は避けられないのではないかという意見のある一方で、医師を引き上げられる病院の経営をどうするかとか、集約化に関しては地域の実情を反映すべきであるとか、今の段階では拙速な集約化は疑問であり時間を掛けて検討すべきであるなどの様々な意見があった。

【渡会克明委員】
 6月に聞いたときにも深い議論が必要であると思ったが、なかなか先が見えないという印象である。本県が活路を見いだす上でまず着手できる解決策を考えた場合、一つは医学部への入学者の選抜において地域枠を設けるということが考えられるが、このことについて現状及び考え方を聞きたい。

【医務国保課長】
 本県の場合、今年4月の4大学の入学定員380名に対して研修医の流入が483名であり、研修医流入県と言える。研修医が流入するから地域枠は設けなくていいというわけでは決してないが、すべての都道府県で地域枠が設けられることとなると、全国各地で少ない医師の取り合いの状況になることが懸念される。現時点において地域枠を設けて医師数を確保するということが、本県の施策として適切かどうかはもう少し議論が必要かと思う。

【渡会克明委員】
 本県は研修医流入県であり、臨床研修の終わった医師が出てくる来年、再来年を待っていればいい。東三河の北部は医療圏として体をなしている。そういう答弁に聞こえるが、それでいいか。

【医務国保課長】
 研修医流入ということは全県的なことであり、東三河北部については研修医を希望する者がいないという現実もあるので、流入県であっても地域的な偏在が解消されるわけではない。
 新城市民病院は地域の医療にとって重要な基幹的な病院であるので、県としても対策を講じている。8月4日に新城保健所において医療関係者の会議を実施し、病院内における開業医による一次救急医療の実施をお願いした。更に新城市民病院がわには、医師に来てもらいやすいような待遇の改善を要請したところである。8月26日には4大学病院長会議を開催し、新城市長に出席してもらって具体的な医師の勤務条件の提示をお願いした。現在は提示のあった勤務条件をもとに、4大学に医師の派遣について検討してもらっている状況である。
 県としては引き続き4大学個別に積極的に働き掛けを行っていきたいと考えている。また9月からはドクターバンク事業がスタートしたので、登録医師に対して新城市民病院についても働き掛けを行っていきたい。更に、自治医科大学卒業医師を現在1名新城市民病院に派遣しているが、自治医科大学卒業の医師派遣についても検討する必要があると考えている。

【渡会克明委員】
 適切な対応をお願いしたい。どうすれば県として大学の医局をリードして行政による医師派遣ができるかということである。公的な病院は地域医療を行う義務がある。その病院が機能を果たせなくなっている今、県としてリーダーシップを執るべきではないのか。医師を県職員として採用し、地域に派遣することは可能か。

【医務国保課長】
 定数の問題もあり即答はできないが、現実的に派遣を受け入れる医師がいるかどうかという問題がある。県職員のように辞令一つで命令地に赴任するという考え方が、医師という職種に受け入れられるかどうか疑問がある。委員の指摘のようなシステムができれば有り難いが、現実としては難しいことと認識している。

【渡会克明委員】
 例えば魅力ある研修プログラムの作成や奨学金制度の実施などにより、へき地医療に3年なり5年なり奉職してもらうといった方法も考えられるのではないか。
 また、国立の大学や病院には県は金を出せないとされているが、例えば救急医療や産科の部門は緩和されるようなことも聞いている。色々と工夫できるのではないか。

【健康福祉部技監】
 本県では名古屋大学が厚生労働省の研修プログラムを先取りした形で研修制度を設けており、卒業生100名に対して更に100名も多くの研修医が流入する状況となっている。そういった研修医が勤務したくなるような魅力ある病院づくりについて、新城市民病院でも検討を行っている。
 医局のリーダーシップも少し弱くなってきており、どこがリーダーシップを執っていくのかということについては過渡期にある。そういう中で東三河全体の医療をどうしていくのかということを考えた場合、県がリーダーシップを執ることは必要であると考える。医師会も含め新城市民病院の問題に関しては様々な働き掛けを行っているので、少し時間をもらいたい。

【渡会克明委員】
 この問題には新城市長を始め陳情を受けているし、署名も行われている。ほかの地域でも同様の問題があるので、全国に先導的な愛知プログラムとなりうるものである。工夫をぜひともお願いしたい。
 次にドクターヘリについて尋ねる。ヘリコプターには消防・防災ヘリ・海上保安庁のヘリ・自衛隊のヘリと様々なものがあるが、ドクターヘリとしては愛知医科大学に配備されている。県としてドクターヘリの活用の方策について考えはあるか。

【医務国保課長】
 ドクターヘリの平成17年度の運航実績は319件で、約1日1件というところである。現実にはヘリを飛ばすのは大変だろうということで、消防では出動の要請をちゅうちょすることもあると聞くが、出動の条件に該当するか否か迷う場合にも呼んでもらうよう、愛知医科大学救命救急センターの方から消防には案内しているところである。ドクターヘリは夜間には飛行できないことや近隣住民との協定の問題などがあって活動に制限が加わるが、可能な範囲内で更なる活用について検討していきたい。

【渡会克明委員】
 使い勝手のいいシステムができれば山間部も含めてより活用回数も増す。全国にドクターヘリを配備することになってはいるが、全都道府県で配備されているわけではない。そういう意味で本県は先進的と言える。例えば救急や小児科、産科といった国が規制を緩和している部分で何かできることがないか勉強してほしい。
 次に助産師について尋ねる。助産師については正常分べんなら医師でなくても助産師でよく、まだまだ働く場、活用の場があるように思うが、その対策についてはどうか。

【医務国保課主幹(看護対策)】
 看護職員の需給見通しを推計した結果、医師や助産師といった産科医療における医療従事者の不足も大きな問題となっている。看護師等の確保対策も早急に必要であると考えているため、本県では関係団体の参加を得て、今年度新たに看護職員の確保対策を検討する会議を計画している。その中で助産師の実態の把握を改めて行い、助産師の確保対策についても検討を行いたいと考えている。

【渡会克明委員】
 対応をよろしくお願いしたい。女性医師の問題も助産師の問題も、働く環境が整備されないと不足の解消は難しい。働きやすい環境づくりという点で、女性医師の院内保育についての現在の取組はどうか。

【医務国保課長】
 院内保育所の利用については元々看護職員が対象であったが、現在は女性、男性を問わず、希望があれば医師も利用できる。医師の勤務体制や医師個人の考え方もあって、子育てをしているすべての医師が利用しているわけではないが、少しでも多くの人に利用してもらい、現場で働いてもらえるよう検討をしていきたい。

【渡会克明委員】
 工夫をしながら丁寧に対応してもらいたい。
 最後に小児救急電話相談の利用状況及び使い勝手について尋ねるが、#8000で電話することにより24時間対応してもらえるのか。

【医務国保課長】
 土・日・祝日・年末年始の午後7時から11時までの4時間の間に#8000に電話してもらうことにより対応を行っている。#8000が使用できない場合は052−263−9909にダイヤルしてもらうことにより利用できる。

【渡会克明委員】
 開始したときと同じ利用方法である。一度始めたらそのまま同じということではなく、使いやすいシステムにするように見直し、工夫をすることが必要である。
 このように行政が地域医療に責任を持ち、リーダーシップを執らなくてはいけないと思うがどうか。

【医務国保課長】
 委員の指摘のような姿勢で取り組まなくてはいけないと考える。小児救急電話相談については年3回検討会を実施しており、担当医の意見などを踏まえて、今後何ができるか検討していきたい。

【渡会克明委員】
 この問題に関し、総括して健康担当局長に答弁を求める。

【健康担当局長】
 医師確保の問題については、ここ数年医療従事者の意識の変化が大きい。示されたデータによると、本県は大変な状況となっている東北などと比べれば比較的充足しているが、それでも不足している状況にある。若い研修医でも小児科志望者は減ってはいないし、産科もそれほど大きな落ち込みはない。しかし過去には想像もできなかったような問題が新たに起きていると思う。今年度は4大学の病院長や医学部長との会議を持ったが、以前は4大学の病院長や医学部長らと議論をする機会はほとんどなく、医局の人事に県が口を挟むことはなかった。こうした会議を通じて、最近では地域医療の重要性や必要性について理解を得られているが、大学がわはできる限り協力したいが送り出す医師がいないということである。なぜ医局員が少なくなったかであるが、必ずしも臨床研修制度だけが原因ではないようである。
 現在の医師の偏在の状況をいかに改善していくかということについては、県医師会・4大学・県が同じテーブルについて十分議論を行う環境はできた。こういった環境を活用する中で、医師派遣について少し脈のありそうな所もあるので、そこを何とかして新城市民病院のような所へ誘導していきたいと考えている。
 助産師についても、助産師の資格者が看護業務を行うなど、現状は必ずしも助産業務を行っているわけではないので、助産師の専門性がもっと生かせる環境づくりが重要であると思う。
 ここ1・2年、医師会も病院協会も含め、関係団体が同じ方向を向いて一緒にやっていくことを確認しながら、実績が上がるように努力している状況であるので理解してほしい。




平成18年12月11日

《一般質問》
【渡会克明委員】
 2点について尋ねる。
 1点目は医師確保対策についてであるが、12月議会では多くの医師不足に関する質問がされており、その関心の大きさは計り知れないものがある。まず、ドクターバンクの現在の取組に関しての問い合わせが14名で登録者が3名と聞くが、ドクターバンク登録への広報、啓発の方法について、どのくらいの規模、内容で行っているのか。また効果は上がっているのか。更にその結果に対する見解を尋ねる。

【医務国保課長】
 ドクターバンク事業を始めるに当たっては、報道機関への発表を行うとともに、病院に勤務する医師7,200名にアンケート及び周知用リーフレットの送付を行った。また先月は県内の病院に対して周知に対する協力依頼を行ったところである。更に、先月開催された県内公立病院長会議や明日開催予定の県病院協会理事会において協力要請を行うなど、あらゆる機会を利用してドクターバンクの周知に努めている。求職の登録状況については数字的に見ると厳しいものと認識しており、休職、未就業の医師への働きかけを行うなど最大限の努力をしていかなければならないと考えている。

【渡会克明委員】
 働きかけをしている離職中の医師の反応はどうか。また、その登録に至るまでの課題は何か。

【医務国保課長】
 どこに休職中の医師がいるのかが把握しづらい。出産や育児で休業している女性医師について県女医会に対する働きかけを行っているが、個人情報保護の関係で女医会も把握しているわけではなく、個人的な医師のつながりでの情報に頼らざるを得ない状況である。また、定年退職を迎える病院の勤務医について、支障のない範囲での働きかけを各病院には要請していきたい。

【渡会克明委員】
 女性医師のワークシェアリングをどのように考えているか。また、その課題に対してどのように認識しているか。

【医務国保課長】
 女性医師のワークシェアリングについては、現在取り入れている病院はないと聞いており、まずはワークシェアリングに協力してもらえる病院を探している。

【渡会克明委員】
 次に、本県に3万人いるという資格を持ちながら未就業の看護職員の確保対策について尋ねる。
 3万人の職種などの内訳や、未就業の主な理由はどのようなものか。

【医務国保課主幹(看護対策)】
 未就業の看護職員については、厚生労働省が推計した全国で55万人という数値を人口であん分すると本県では3万人が見込まれるということであるが、職種の内訳についてはよく分からない。本県では総合看護専門学校において、潜在看護職員の復帰のための看護職カムバック研修を行っており、その際の調査によると復帰できない理由としては、子育て、現在の知識や技術に付いていけないこと、家事、労働条件などが挙げられる。

【渡会克明委員】
 今の説明の看護職カムバック研修の受講者数、職場復帰者数はどれほどか。

【医務国保課主幹(看護対策)】
 平成15年度から行っており、受講者数は3年間で815名で、アンケート調査を行い回答のあったうちの66.8パーセントに当たる163名が職場復帰をしている。

【渡会克明委員】
 病院では常時募集しているという看護師の人材不足について尋ねるが、新卒採用の状況はどうか。

【医務国保課主幹(看護対策)】
 平成17年度の卒業者数が2,743名で、就業者数は2,344名である。

【渡会克明委員】
 短期離職者数は把握しているか。また、その原因は何が考えられるか。

【医務国保課主幹(看護対策)】
 看護職員の実態調査を見ると、離職率は平成17年度ではおよそ14パーセントである。日本看護協会の調査によると離職者は3年以内にほぼ80パーセントが復職するというデータもあり、循環しているということも考えられる。離職の原因としては結婚、育児が多いが、その他としてほかの職場への移動などがある。

【渡会克明委員】
 3年間のうちに循環しているということであるが、循環していてはステップアップは困難であると感じる。また、病院が常時募集をしていることも矛盾しており、悪循環だと思う。その対策が急務であると感じるがどうか。

【医務国保課主幹(看護対策)】
 大きな病院であれば、定着するためのステップアップ研修を病院の中で行っている。中規模程度の病院では研修を行う指導者がいないということで、県として定着支援のための研修を行っている。今後も定着支援のための研修やカムバック研修に力を入れていきたい。

【渡会克明委員】
 想像するに、進歩する技術面に追い付かないことによる不適合の問題や、忙しく厳しい職場環境の中での人間関係構築などの難しさなどがあろう。病院側が努力するよう指導してもらう一方、県が行う研修のような外からの支援も不可欠であり、その両面が必要であるので支援に対するフォローを要望する。
 次に、9月議会の本委員会で奨学金制度の導入を提案したところであるが、今議会でも関連する事項の答弁があったが、もう少し詳しく説明してほしい。

【医務国保課長】
 今議会において知事は、医学生の奨学金について検討をしていくとの答弁を行った。その方向で今後は検討を行っていかなければならないと認識している。

【渡会克明委員】
 次に、生徒の実習先の確保で苦労しているのは宝陵高校だけか。

【医務国保課主幹(看護対策)】
 県内には大学を含めて50校の看護系の学校があるが、多くの所では設置母体に病院を併設しており、講師の医師や実習病院が確保できているが、病院を伴わない学校については宝陵高校を含め実習先に苦慮していると聞いている。

【渡会克明委員】
 看護師不足が叫ばれる中で、看護師への入口となる部分でつまずくような質問が出るのはどういうことかということである。教育委員会や学校の努力に任せるばかりでなく、受け皿づくりが必要ではないのか。今後の対応を聞きたい。

【医務国保課主幹(看護対策)】
 医師講師及び実習施設の確保についてはその養成所の教育内容にかかわる事項なので、まずはその養成施設の努力が不可欠であると考える。県としては、教育上支障のないように養成所とともに実習先について一緒に考えていきたい。

【渡会克明委員】
 次に、小児救急電話相談について尋ねる。9月議会の本委員会において使いやすいシステムにするよう見直しを要請したところ、今議会で見直しを行う旨の答弁があった。緊急性のない患者の受診を減らすということであるが、それで患者へのサービスや安全は担保できるのか。また、電話で患者にアドバイスする際のマニュアルか申合せ事項はあるのか。

【医務国保課長】
 小児救急電話相談については、小児科医に対応してもらっており、専門的な見地に基づくマニュアルも備えている。説明に疑問がある場合には最終的には医療機関を受診してもらうことで安全性の確保を図っている。

【渡会克明委員】
 2点目に、DV対策について尋ねる。平成13年に制定されたDV防止法は、平成16年の改正で接近禁止命令の対象が拡大し住居からの退去命令を2週間から2か月に延長するなど、暴力防止のための対策が大幅に強化された。今後は被害者の自立支援を更に拡大させなければならないと思う。ところである調査によると、女性の立場から見て最も結婚したくないタイプの男性として、浮気よりも嫌なことに暴力的という項目が挙がっている。また最高裁が発行する司法統計年報によると、DVを理由とした離婚の申立ては全体の20パーセントを超えている。本県では昨年12月にDV対策の推進を図るため、配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護に関する被害者支援基本計画を策定し、DV対策を進めている。まず、DV防止法とは、どういう法律か。

【児童家庭課長】
 正式名称は、配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護に関する法律といい、平成14年度に全面施行された。その主な内容は、国及び地方公共団体が被害者の自立支援の責務を有することを明確にしたこと、被害者に対する相談や保護を行う配偶者暴力相談支援センターを設置すること、そして裁判所が被害者からの申立てにより保護命令を発することである。このほか、被害者の保護を図るための活動を行うNPOなどの民間団体に対する必要な援助や、職務関係者に対し被害者の人権、配偶者からの暴力の特性などに関する理解を深めるために必要な研修を行うことなどが定められている。委員の指摘のように平成16年度に法律の一部改正がなされ、都道府県において配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護のための施策の実施に関する基本的な計画を定めることとされ、本県においては昨年12月に配偶者からの暴力防止及び被害者支援基本計画を策定したところである。

【渡会克明委員】
 DV被害者の発見・通報の体制について尋ねる。DV防止法によれば、DV被害者を発見した場合は配偶者暴力相談支援センター又は警察官に通報するよう努めることになっている。ところがDVは家庭内で行われることであり、外部から発見することは極めて困難である。被害者自身も様々な理由により保護をためらうことが考えられ、発見や通報は容易ではない。したがって被害者の保護を図るには、友人・近隣住民・医療関係者などから広く情報を得ることが重要である。特に、業務上それを知る機会のある医療関係者からの通報は大変重要であると考える。しかし、通報はプライバシーの保護との関係において、通報者の安全確保への不安からちゅうちょする場合が想定されるが、このDV被害者の発見・通報の体制についてどのように考えるか。

【児童家庭課長】
 DVを受けている人は暴力のある生活が当たり前のようになり、そこからなかなか抜け出せないということと、家庭内のことでもありなかなか表に現れにくく、被害者も相談しづらいことも事実である。このためDV防止法では、DVを発見した第三者からの通報を期待している。とりわけ医療機関は被害者を発見しやすい立場である。本来医師法では患者のプライバシーに配慮し医師には守秘義務があるが、DV防止法では医師に関する通報の規定があり、通報ができるようになっている。県としては、そういった法律の趣旨や内容を多くの県民に周知していきたい。県の基本計画でも広域的啓発の実施を挙げているので、広く市町村・警察・医療関係機関などに周知を図るとともに、同時にプライバシーの保護や通報者の安全確認についても、特に配慮を求めているところである。このほか、医療機関における対応についての指針の作成についても検討を進めたい。

【渡会克明委員】
 次に、DV相談体制の現状と充実という観点から尋ねる。DVは犯罪であり、重大な人権侵害であり、許すことができない行為である。ところがDV被害者からの相談は年々増加傾向にある。このため各相談機関の充実がますます求められている。ここ数年の相談件数の推移とその相談場所についてはどうなっているか。

【児童家庭課長】
 配偶者暴力相談支援センターで受けたDV面接相談件数であるが、平成13年度に629件、DV防止法が施行された平成14年度に806件、平成15年度に767件、平成16年度に1,080件、平成17年度に887件と、年度ごとに増減はあるが過去からの推移は増加傾向にある。DV相談を受けている県の組織は、女性相談センター、県事務所7か所に相談センターの駐在室がある。そのほかウィルあいち、警察でも相談を受け付けている。また、市町村での相談体制についても現在整備を進めるとともに、NPOなどの民間団体でも受け付けている。

【渡会克明委員】
 DV被害者が最も身近に相談できるのは市町村であり、その役割は大変重要である。市町村におけるDV窓口を明確にする、手続きなどを簡略化する、あるいはフォーマットを統一化するなど相談体制を整備する必要があると思うがどうか。また、市町村へどのような支援を行っているのか併せて尋ねる。

【児童家庭課長】
 しょうすいしている被害者にとって、身近な市町村での相談体制の充実が重要なことであると考える。本県のDV基本計画でも市町村への支援は大きな柱の一つである。県としては、昨年度にどこの市町村の窓口でも統一した対応がしっかりかつスムーズに取れるように、市町村相談窓口マニュアルを作成し市町村及び関係機関へ配付を行った。更に本年度は、市町村のDV担当役職者及び担当者を対象とし、DVの担当の明確化、被害者支援体制の充実を目的とした研修をNPOに委託して実施した。このように市町村には相談体制をしっかりしてもらえるよう、基盤作りを支援しているところである。

【渡会克明委員】
 次に一時保護について尋ねる。状況によっては一時保護が必要な被害者もあると思うが、どのような対応をしているのか。

【児童家庭課長】
 一時保護は相談に来た被害者を配偶者と隔離することを目的としており、女性相談センターに施設を設けて対応を行っている。衣食住の提供、相談員による面談、保護命令の手続きの助言など、被害者への支援を行っている。

【渡会克明委員】
 そうした場合の民間との連携はどうか。

【児童家庭課長】
 一時保護ができない場合、シェルターと呼ばれる民間施設で一時保護の委託を緊急避難的に行うことにより協力を受けている。

【渡会克明委員】
 被害者の自立支援の充実の中で、特に子どもをDVから守る支援について尋ねる。被害者が子ども連れで助けを求めてくるケースは多いと思うが、いやされたい、ゆっくり休みたいという親子にどのようなケアを行っているのか。

【児童家庭課長】
 平成17年度の実績で、被害者本人が190人に対して同伴児童が184名で、多くの場合児童を伴って保護されている。女性相談センターでは子どもを伴って保護された場合、個室の対応が設備上難しいので民間シェルターなどへの一時保護委託を実施している。また女性総合センター一時保護所では保育士を雇ったり、平成14年にプレイルームの整備を行うなど同伴児への対応ができるよう努めている。

【渡会克明委員】
 児童虐待、いじめ、不登校や引きこもりなどにつながらないように、丁寧できめ細やかなケアが必要であると思うが、関係機関との連携・協力はどうか。女性相談センターと児童相談センターはそれぞれどのようなケアをしているのか。

【児童家庭課長】
 配偶者が相手方女性に暴力を振るうのを子どもに見せるのは、児童虐待の一種と言うことができ、そういったことに対する側面からの支援が必要となる。DV関係の愛知県DV被害者保護支援ネットワークには児童相談センターの者を構成員とし、また虐待関係の要保護児童対策協議会には女性相談センターの所長を構成員とし、情報交換を行っている。また、母親が同伴児を虐待するような微妙なケースもあるが、その場合は児童相談センターから女性相談センターへの通報を受けて、親子を隔離して対応することとなる。なお本年度からDVに関する業務が児童家庭課所管となったことから、女性相談センターと児童相談センターとの連携を一層深めていけると考える。

【渡会克明委員】
 民間の協力が不可欠であると思うが、現場を知るNPOやボランティアとの定期的な意見交換の場を持つ必要があると思うがどうか。

【児童家庭課長】
 民間団体は、我々行政が持っていないノウハウを有する貴重な力である。現在は民間団体、児童家庭課及び男女共同参画室の間での意見交換や、民間団体と女性相談センターとの意見交換の場を設けているが、開催回数が少ないため定期的な開催について、民間と協力しながら行っていきたい。

【渡会克明委員】
 DV対策というのは、子育て支援や少子化対策にもつながる大切な問題であると思う。まずできるところから連携して工夫をし、きちんと対応していくことが肝心であると思う。最後に、今後のDV支援の施策をどう考え展開していくのか尋ねる。

【健康福祉部長】
 DV被害者の支援は、暴力から逃れることで終わるわけではない。自立した生活が送れるようになるまで続くものと考えている。DVの啓発・相談・保護、生活再建への支援など多岐にわたる支援が必要であると認識している。こういった面では民間のNPO活動が長年の経験を持っており、現在でも民間シェルター、研修の実施、計画策定などにおいて様々な協力を受けている。先行的に実施されていることも多くあると聞いており、そうしたNPOとの連携も大変重要であると考えている。県としては女性相談センターを中心として、これまで以上に市町村や民間団体などの関係機関との連携を更に取りながら、基本計画に則してDV被害者の支援を一層積極的に実施していきたい。




平成19年1月9日

【渡会克明委員】
 よく自分の所に相談があるのは、特に高度先進医療についてどこに問い合わせたらいいかということである。集約した情報をインターネット等でアクセスできることは住民にとって有り難いことであるが、比較対照したり、システムが見やすく統一されていたりといった観点から、単独の都道府県や単体の医療機関だけでは対応は難しいと思う。住民への情報提供について、もう少し考えていることがあれば説明してほしい。

【深田参考人】
 高度先進医療について、どこでどのような医療を行っているかが分からないという人は多いと聞く。がんについては、がん対策基本法が成立し、医療の均てん化を進めていきたいと思うが、がんセンターを中心に情報発信ができるようになっていっている。循環器は循環器医療センター、精神神経は精神神経センターといったナショナルセンターを中心に、情報提供を図っていくことができると考えている。

【渡会克明委員】
 各都道府県に同一のシステムを設置するということは考えてはいないか。

【深田参考人】
 施策の今後の検討課題として意見を承るが、医療の情報の非対称性ということが言われ、通常の取引においては買う人間と売る人間が同じ情報を持った上で契約が成立するが、医療においては、患者は痛みは分かるがなぜ悪いのか、どうしたらいいのかということは分からない場合がある。基本的には医療機関で診断を受けて、治療してもらうのが通常の行動パターンである。医者の間では情報はフォーマル・インフォーマル含め蓄積がある。したがって大切なことは、日本医師会でも議論されているが、プライマリーケアー、すなわち掛かり付け医を持つということである。掛かり付け医から患者の一番適切な医療に早く到達できるシステムの構築が必要である。そのためには、掛かり付け医のプライマリーケアー医としての能力を高めることも必要になってくる。

【渡会克明委員】
 これからの課題であろうが、患者が安心する仕組みを構築してほしい。医師の地域の偏在化、診療科目の偏在化が問題となっている今日であるが、後期専門課程を終えた段階でのアンケートでは、脳神経外科・麻酔科・産科を希望する人は大勢いたと記憶している。一体その人たちはどこへ行ってしまうのかということである。へき地医療への従事を義務付けるといったようなことを開業する際の要件にするとか、開業医に地域医療への取組への責任をもっと持ってもらうような方策はないか。何か開業医に協力してもらえる制度があれば教えてほしい。

【深田参考人】
 医師の診療科目の偏在化は難しい課題である。臨床研修の必修化の際に、それぞれがマッチングして自分の行きたい専門分野のある病院に行くという仕組みにしたところ、大学に戻ってくると思っていた者が帰ってこなかったというのが原因ではないかと思う。地域別に見ても、医師の集中する病院は必ずある。医師の集まらない病院もある。大きな病院の院長からすると医師を集める努力を病院はすべきであるという意見もあるが、マグネットホスピタルと言われるように集まる所には集まって1点に集中してしまうということが、医師数が増えても偏在化する一つの要因としてある。開業医の地域医療への貢献、協力はぜひお願いしたいと思っており、初期救急への対応や患者住民への啓発活動への協力など、医師確保対策に係る対応する予算として補正も含め100億円を用意した。開業医の考え方であるが、午前診察、午後往診、夜間は輪番で随時対応するような診療所をイメージしている。地域医療に対して何らかの位置付けをしていければと思っている。診療所は届出だけで開設できるので、要件を加えるとか規制することは法改正を伴うし、また職業選択の自由の面から困難である。ただ、マグネットになっている病院に医師の派遣を含めた地域医療への支援を求めるのは法的に不可能ではないと認識しており、今後の検討課題と思っている。

【渡会克明委員】
 医療法に規定される医療対策協議会の果たすべき機能に、都道府県が主体となって医師派遣を実施とあるが、イメージがしづらいのでもう少し説明してほしい。

【深田参考人】
 中・長期的な効率的医療提供体制の在り方についてどうするかを考えた上でという前提になるが、医師が不足しがちのへき地に対して都道府県が主体的に医療対策協議会を活用して医師の派遣ができないかということである。モデル事業をやってみないと分からないが、来年度は医療対策協議会に派遣協力した病院については補助金を活用してやりやすくする仕組みも考えていきたい。

【渡会克明委員】
 いかに都道府県のリーダーシップがとれるかという観点から質問した。愛知県というと医者がたくさんいるのではないかと思われがちであるが、医師派遣、確保は難しい地域もある。その点を理解してほしい。




平成19年3月13日

【渡会克明委員】
 最初にがん対策について尋ねる。
 まず、がん治療について尋ねるが、食生活の欧米化によってがんの種類も欧米化し、例えば乳がん・大腸がんなどが増加していることを重視すると放射線治療が有効な治療法となってきていると言われているが、このことについてはどういう認識を持っているか。
 また、放射線治療専門医は全国で500人強と言われるが、本県にはどのぐらいいるのか。

【健康対策課長】
 がんの主な治療法には外科的手術・抗がん剤投与・放射線治療などがあるが、がんの部位・病理所見・進行の程度・患者の症状や気持ちなどを含め、最も適した治療法が選択される。
 放射線治療は、外科的手術と異なり臓器を摘出する必要がないため、必要な臓器を温存し、治療前と同様の生活が可能となる治療法である。したがって、外科的手術や化学療法・抗がん剤投与とともにがん治療において重要な役割を果たしており、有効な治療法の一つであると認識している。最近の放射線治療の進歩は目覚ましいものがあり、県としては、放射線治療を含め治療法の選択肢が広がることが重要であると考えている。
 また、県内の専任放射線治療医については、平成16年度医療実態調査結果によれば53人である。

【渡会克明委員】
 放射線治療を受ける人が今後増えてくることが予想されるが、それに十分対応する必要がある。粒子線治療はエックス線を使う放射線に対し、患部を的確にたたくことがメリットとされているが、治療費が高く、施設の建設費も高額ということがある。長短を考慮すると、まずは放射線治療の普及と専門医・スタッフの養成等の環境整備が求められると思う。
 当面は、がん診療連携拠点病院でのがん専門医等の人材確保とともに、治療機器をしっかりと整備をしていくことが大切である。この辺りの県の取組についてはどうか。

【健康対策課主幹(生活習慣病対策)】
 平成19年1月現在で、都道府県の拠点病院としてがんセンター中央病院が、地域の拠点病院として10の医療機関が認定されている。それぞれが連携を図りながら、医療従事者に対する専門研修を来年度実施したいと考えている。また、がんセンターでは医師免許取得後2年の臨床研修を受けた医師に対してレジデント研修を実施しており、そういった場で放射線診断、放射線治療の研修が実施されている。
 治療機器の整備については、国の放射線治療機器緊急整備事業を利用し、リニアック等の放射線治療機器の更新に向けた整備について事業採択を目指していきたい。

【渡会克明委員】
 身近な事例で、放射線治療に替えることにより生体を残すことができたという例がある。しかし、患者から治療の変更を申し出ることは勇気がいる。がん患者にとって、治療上複数の専門医の意見を聴くことは極めて重要であるが、県内においてセカンドオピニオンを使いやすくする仕組みの導入について、どういうプランを持っているのか。

【健康対策課主幹(生活習慣病対策)】
 がん診療連携拠点病院に設置が義務付けられる相談支援センターの業務の一つに、セカンドオピニオンのできる医師の紹介が位置付けられている。
 本県では、11あるがん診療連携拠点病院の普及啓発を図るとともに、相談支援センター相互の連携を進め、県内のどこに住んでいてもセカンドオピニオンを受けることができるような体制の整備をしていきたいと考えている。

【渡会克明委員】
 女性の乳がんや子宮がんにかかる人が増加している。がん予防を図るためには、がん検診を受け早期発見・治療につなげていくことが大切である。受診率向上に向けた県の取組はどうか。

【健康対策課主幹(生活習慣病対策)】
 乳がん検診用のマンモグラフィを平成17年度に11台、平成18年度に9台整備を行った。19年度末で県内に144台が整備されたことになる。
 また、がん検診の実施主体である市町村に対して、はがきによる個別の勧奨や精検受診者への保健師の訪問指導を行うことによりがん検診の受診率を上げている事例を紹介するなど、がん検診の重要性の普及啓発を図るなどの働き掛けを行い、受診率の向上に努めていきたい。
 来年度は、9月のがん征圧月間におけるがん検診を推進するためのキャンペーンを実施するとともに、がん検診受診率向上のための講演会の開催により県民に対して普及啓発を行っていきたい。

【渡会克明委員】
 検診は、がん予防にとって重要な観点であると思うので、引き続き取組に努めてもらいたい。
 がん対策を推進するためには、人材育成を含め、県がんセンター・大学病院・がん診療連携拠点病院を含む医療機関等との連携が必要と考える。県として今後どのように連携を図っていくのか。

【健康対策課主幹(生活習慣病対策)】
 都道府県がん拠点病院である県がんセンター中央病院には、地域の拠点病院を取りまとめていく役割がある。来年度には、仮称であるが愛知県がん診療連携協議会を立ち上げ、拠点病院の相互連携を進めるとともに、拠点病院と地域の医療機関との病病・病診連携を促進していきたい。また、地域がん拠点病院である名古屋大学医学部付属病院の協力を得て、大学病院との連携も図っていきたいと考えている。

【渡会克明委員】
 昨年末、病院・診療所における医療用麻薬の管理マニュアルの改定内容が明らかにされた。例えば患者へ麻薬を届ける者について、患者以外の看護師・ホームヘルパー等に手渡すことができるとされているが、県内においてこれらの対応は十分できているのか。

【医薬安全課主幹(毒劇物・麻薬・血液)】
 昨年12月に改正された麻薬管理マニュアルでは、麻薬が適切かつ円滑に患者に提供されるよう、患者の視点に立って規制が緩和された。本県では県医師会・県病院協会・県薬剤師会等を通じて、改正された麻薬管理マニュアルを病院・診療所・薬局等へ周知し、患者の健康状態等に配慮した麻薬の取扱いなどを適切に行うよう指導しているところである。
 なお、県薬剤師会は、院外処方せんなど在宅医療における麻薬の取扱いに適切かつ円滑に対応するため、愛知県訪問看護ステーション及び介護サービス事業者などと連携を図っている。

【渡会克明委員】
 規制緩和という趣旨を十分理解してほしい一方で、取扱いにおいて心配な部分もあるので両面で運営をしっかりしてほしい。
 次に、医師確保対策について尋ねる。
 昨年春から報道を含め医師不足が話題となっている。私も昨年6月の当委員会から今回に至るまで医師不足について取り上げているが、なかなか出口、明かりが見出せないのが現状である。医師不足は深刻な問題で、豊橋市民病院でも常勤医師を引き揚げるという話がある。
 このような医師不足は、まず平成16年4月から実施されている臨床研修制度により大学医局の医師派遣機能が低下し、地域の医療機関からの医師の引き揚げが生じていることが原因にある。次に、公的病院等での医師の過酷な勤務実態、地域の医療機関の経営状況の悪化などが生じていることがある。大病院や診療所と中小病院では病院経営が両極化しており、安心できる地域医療の確立ということを考えると非常に危機感を抱いている。三つ目には、女性医師の増加に対応する、仕事と子育ての両立支援策が十分に講じられていないことがある。この三つが医師不足の大きな原因であるが、様々な原因が複合的に作用して生じている。
 医師不足の解消に向け、医療機関の集約化や魅力ある研修病院の整備、病院間連携体制の整備、小児救急での電話相談窓口の整備など、安心できる地域医療体制の整備に向けて引き続き取組を進めてもらいたい。また医師のみでなく看護師や助産師などの医療人材の育成・確保についても取組を進めてほしい。
 愛知県民の地域医療を考えた、他県に先がけるような独自の医師確保対策はないのか。また、医学生や研修医に対する、県としての働き掛けはどのようなものを考えているのか併せて尋ねる。

【医務国保課長】
 医師確保対策については、本年度から医師確保対策推進事業に取り組んでおり、その一つがドクターバンク事業である。3名の紹介事例も生まれて一定の成果を挙げつつあると考えており、引き続き着実に取り組んでいきたい。
 来年度の新たな事業として、病院の女性医師が継続して働くことができるよう、また、出産や育児などで離職した場合にも安心して職場へ復帰することができるよう、ワークシェアリングのモデル事業を実施して短時間勤務の可能性について調査検討し、その成果を県内の病院に伝えていきたいと考えている。
 病院の過酷な勤務については、小児科等の救急病院に軽症の患者が多く来て患者の治療が十分にできない等の問題も指摘されていることから、小児救急電話相談について少し人員を拡充して多くの相談を受けることにより、救急病院の負担を少しでも減らすことができるよう努めていきたい。
 医学生に対する取組としては、県の保健所の所長の中に大学などで講義を担当している者もいるため、そうした場を通じて愛知県の医師不足や地域医療の現状を医学生に説明し、医学生の将来的な進路選択に当たって適切な情報提供を行っていきたいと考えている。
 また、研修医に対する取組としては、新医師臨床研修において2年目に地域保健・医療について研修を受けることが義務付けられており、保健所で研修医を受け入れている。本年度は109名の研修医が保健所で研修を受け、その研修の場では主に保健医療行政と臨床との連携に関する理解を深めてもらうような研修を行っているが、県の地域医療の実情についても説明を行うなど、研修医の今後の進路選択に係る働き掛けも行っている。
 同じく臨床研修2年目の地域保健・医療の研修に関連して、本県では、がんセンター愛知病院の中に置かれているへき地医療支援機構が中心となって、へき地の医療機関での医療を体験するプログラムを用意し、研修医が所属している病院とへき地の医療機関との間で研修受入れの調整を行っている。このシステムはへき地医療臨床研修システムと名付けているが、このシステムが本格的に稼動した本年度は47名の研修医がへき地医療を体験し、専門医に偏らない総合的な医療を体験し、へき地医療に対する理解を深めてもらっている。来年度以降、参加する医師が大幅に増える見込みとなっており、このシステムを継続することによってへき地医療・地域医療を担うことのできる医師を増やしていきたいと考えている。
 最後に、本県独自の医師確保対策については、ドクターバンク事業などできるところから取組を行ってきたが、医師確保、特に病院勤務医確保対策は、新医師臨床研修医制度や診療報酬制度など医療の基本的な制度設計が国の施策に基づいており、即効性のある県独自施策はなかなか見出しにくいのが現状である。しかし、来年度の新規事業であるワークシェアモデル事業は都道府県で最初の取組と自負しており、女性医師の活用をアピールするという点では今後の波及効果があるものと考えている。
 今後とも、県としての対策について、医師確保に関する支援委員会などの関係者の意見を得ながら検討を行うとともに、病院や特定の診療科に配慮した診療報酬制度の見直しなど、国に対しては機会あるごとに働き掛けを行っていきたいと考えている。

【渡会克明委員】
 昨年、大学や医師会等の入った支援委員会ができて、県の立場から言うべきことを言えるようになった。こうした場で県民の方を向いて話をリードしていくのは行政の役割であると思う。この状況を県としてどう考えるか。

【健康担当局長】
 医師不足の一つの要素として、大学における博士号取得に対する医学生にとっての魅力が低下していることがある。現在は基幹病院における症例数を集め、それに基づいて論文を書いて専門性を高める。その辺りの志向が変化してきている。魅力のある病院・診療科・大学病院というものを求めることが最も重要なことである。病院の方でも特色を出し知恵を出して魅力ある医師が集まるような病院を目指しているというのが現状である。
 四大学の病院長あるいは医学部長に集まってもらったということは過去にはないことで、医師不足の状況や実態を知ってもらうことは意義のあることであり、地域医療に目を向けてもらういい機会であると考えている。このような機会を継続して設け、法律で設置が義務付けられた医療対策協議会も活用しながら、行政の役割として地域医療をどう確保していくかという課題の解決のために医師会を始め関係団体に働き掛け、解決に向けしっかりやっていきたいと考えている。

【渡会克明委員】
 ぜひともしっかり取組をしてもらいたい。





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