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2007.09.25 : 平成19年9月定例会(第2号)

◯六十五番(渡会克明君)
 議長のお許しをいただきましたので、私は、公明党愛知県議員団を代表して、生活者重視の視点に立った我が党の基本姿勢に沿って、県政の諸問題について順次お尋ねをいたします。
 質問の第一は、県税収入の見通しと今後の財政運営についてであります。
 本年度の県税の当初予算額は、三位一体の改革の一環として行われた所得税から個人住民税へ、国から地方への税源移譲もあり、当初予算額ベースでは過去最高の一兆三千百十六億円を計上しております。
 法人二税は企業の業績に大きく左右されるものでありますが、経済のグローバル化の進展に伴い、企業の海外展開、海外取引も質量ともに増加をしております。こうした状況の中、企業業績も海外の経済情勢の影響を受けやすく、税収の不安定要因も大変大きくなってきているのではないかと思います。ここ数年、本県の税収も順調に推移しており、喜ばしいことでありますが、現在の好調な状況がいつまで続くのか心配な面もあります。バブル崩壊後、県税収入が激減し、県政運営に大きな影響を及ぼしたことを忘れてはならないと思います。
 そこでお尋ねをいたします。
 日本経済に影響を及ぼす米国経済の先行き不透明感が漂う中で、本年度の県税収入についてどのような見通しをされているのか、お伺いをいたします。
 また、税源移譲額は見込み額を確保できたのか、あわせてお伺いをいたします。
 次に、今後の財政運営についてであります。
 本年六月に、地方公共団体の財政の健全化に関する法律が成立し、新たな財政再建法制が制度化されることとなりました。今回の法律は、昨年の夕張市の財政破綻、いわゆる夕張ショックをきっかけに、現行の地方財政再建促進特別措置法に基づく再建法制を抜本的に見直し、新たな財政指標を導入するとともに、地方自治体の行政破綻を防ぐため、財政の早期健全化や再生のための道筋を整備するものであり、平成十九年度決算から段階的に運用されることとなっております。
 このうち、新たな財政指標につきましては、具体的には、実質赤字比率、連結実質赤字比率、実質公債費比率、将来負担比率の四つの健全化判断比率が定められ、平成十九年度決算からその公表が義務づけられたところであります。
 これまでの財政再建団体の基準が一般会計と特別会計をベースにした普通会計の赤字額の大きさだけであったのに比べ、より幅広い視点から財政の健全性を判断しようとするものであります。
 これらの健全化判断比率の中でも、地方債残高等を基礎とする将来負担比率は、地方財政の健全性を示す指標としては初めてのストック指標であり、地方債残高の増加が将来負担比率を押し上げる、すなわち悪化させる要素となることは明らかであります。そして、この比率が今後国が定める一定の基準を超えた場合には、地方公共団体は財政健全化計画を定めなければならないこととされております。
 このため、今後の財政運営においては、この将来負担比率を極力上昇させないこと、そのためには、県債残高や公債費負担の増加を抑制することがより一層重要になってくるのであります。
 そこでお尋ねをいたします。
 新しい地方財政健全化法制の趣旨に沿って財政健全化を進めるため、今後の県債発行や公債費の増加の抑制についてどのようにお考えか、お伺いをいたします。
 また、当面の財政運営の課題として、十九年度当初予算で臨時の財源対策として行っている減債基金などからの四百億円の繰入運用の解消について、先ほどお尋ねした本年度の県税収入の見通しを踏まえ、どのように取り組まれるのか、お伺いいたします。
 質問の第二は、地方機関の見直しについてであります。
 地方機関の見直しについては、県は去る八月三日に素案を公表いたしました。この素案におきましては、見直しの基本的な考え方として三つのポイントが挙げられており、一つ目には、県民ニーズに対応した機能の強化、二つ目として、市町村合併等に伴う広域化・集約化、三つ目として、山間地域の振興強化というポイントが示されております。
 私は、今回の見直しにおいて、県民の窓口は維持しながら、内部事務や専門職員は集約化するといった手法や、県民に直接かかわらない行政間の関係である市町村関係業務の本庁集約化を行う点など、行政合理化に関する部分はよく工夫がなされていると考えております。
 しかし、どちらかというと、これは行政側の目線であります。県民生活により密接に関連している地方機関の見直しに際しては、やはり県民の目線に立ってしっかりと考え、説明していくことが重要であります。これらの見直しによって、具体的に県民にとってどういったメリット、デメリットがあるのか、少し見えにくいと感じるところであります。県民にとってのメリットを高める、そして、それをしっかり説明をする、このことが重要であります。
 こうした県民サービスという点で最も大きいのは、県民相談への対応ではないでしょうか。県には毎日たくさんの相談が寄せられており、その内容は複雑化、多様化していると聞いており、県の相談機関は貴重な存在であります。
 もとより、相談に応じるのは県の機関だけとは限りません。市町村の機関、国の機関、民間の機関などさまざまな機関が存在します。それぞれの役割も異なります。また、相談にもさまざまなレベルがあり、すべてを県の機関で受けとめるということではありません。相談先がわからない場合の窓口となる役割、あるいは相談先が多岐にわたるような場合のコーディネーターの役割、これが県に求められる大きな役割ではないでしょうか。
 県の相談窓口として県民生活プラザがあります。旅券を発行していることはよく知られているのですが、そこでどういった相談をしているのか知っている県民がどれだけいるのでしょうか。相談先がわからない場合には、この県民生活プラザで適切な機関を教えてくれるとのことでありますけれども、そういったことを知っている県民がどれだけいるのでしょうか。
 そこでお尋ねをいたします。
 県の相談機関には、今回の見直しに関するものだけでも、県民生活プラザのほかに、保健所、児童相談センター、福祉事務所、教育事務所などさまざまな機関があります。知事は、今回の地方機関の見直しにおいて、県民の目線に立ち、県民相談の機能をどう充実させていこうと考えておられるのか、お伺いいたします。
 質問の第三は、設楽ダムについてお伺いいたします。
 東三河地域は、渇水により、この十年間で七カ年の節水を、また、平成十五、十六年には、台風による床下浸水といった洪水の被害を受けました。設楽ダムは、この地域の安全を守り、継続的な発展を維持していく上で不可欠なダムであります。
 その設楽ダム事業の進捗状況でありますが、ダム建設事業の環境影響評価、いわゆる環境アセスメントにつきましては一連の手続が終了し、いよいよダム着工に向けまして、ダムの規模や建設費、工期などが定められる基本計画の作成や、水没者等に対する補償基準の提示といった動きが本格化すると聞き及んでおります。
 しかしながら、設楽ダムの建設を促進するためには、なお多くの調整を要する課題があり、その中で私が特に気になる二つの点について質問をしてまいります。
 その一つは、県が設楽町にダムの実施計画の調査を申し入れてから三十年余りが経過いたしました。その間、絶えず不安な生活を強いられ、今後、水没などにより住居の移転を余儀なくされる方々の生活再建についてであります。
 設楽ダムは、総貯水量が九千八百万トン、水没区域が三百ヘクタールにも及ぶ大規模な事業であります。そこで、いよいよ着工するという段階を迎えますと、ともすれば、スケジュールを優先する余り、水没される方々の意に反して、先を急ぎ過ぎる嫌いがありはしないかと危惧をするものであります。
 水没される方々の御意向を十分に踏まえ、新たな生活の出発点となる移転地の確保に国や設楽町と十分に連携をとり、県として万全を尽くすべきではないでしょうか。また、下流の市町もできる限りの温かい手を差し伸べるべきであると考えております。
 さらに、もう一つの課題でありますが、設楽町は県下でも一番急速に人口減少が進んでいる地域であります。若者の流出と急速な高齢化により地域の活力低下が心配されており、その対策は急務となっております。
 ダム建設によって受ける影響を緩和し、水源地域の活性化を図るため、県や下流の市町が道路を初めとする各種の振興事業に対して精いっぱい支援をすることが必要であります。
 その上で、設楽町を元気な町にしていくために、例えば、ダム湖周辺の環境整備によって観光客を集めることや、民間団体やNPO活動による森づくり、環境教育といった上下流域の交流事業の一層の推進が必要であると思います。
 そこでお尋ねをいたします。
 ダムの建設により多数の水没家屋が生ずることから、県が進めようとする生活再建対策のうち、とりわけ重要な移転地の確保についてはどこまで進んでいるのか、お伺いをいたします。
 また、設楽町の振興対策について、県を初め下流市町の果たす役割は非常に大きなものがあると考えますが、その検討状況はどうなっているのか、お伺いをいたします。
 質問の第四は、県立病院の運営とがん対策についてであります。
 まず、県立病院の運営に関してお尋ねをいたします。
 県民は、県立病院に安心・安全で高度な医療の提供を求めております。本県では、県立病院の運営に当たって、平成十六年四月から地方公営企業法の全部適用により病院事業庁を発足させ、効率的、機動的な運営のための体制を整備したところであります。病院事業庁では、経営改善行動計画を策定しており、この計画には、県立病院の機能を特化することにより県民に高度で良質な医療を提供する方針が盛り込まれております。
 この病院機能の特化についてでありますが、岡崎の愛知病院につきましては、名称を改め、がんセンターの一翼としてがんの診療機能が充実されました。一宮の尾張病院についても、充実した循環器の病院としての機能と、結核・肺がん治療を中心とする呼吸器の病院としての機能に特化し、名称も循環器呼吸器病センターと改めましたが、この方向性は正しかったと認識をしております。
 しかし、循環器呼吸器病センターにおいては、近年、大きな議論を呼んでおります医師不足が消化器内科及び呼吸器内科で生じております。昨年度と比較してみますと、今年度は大幅に入院患者が減少しており、これまでの経営改善の努力が水泡に帰するのではないかと危惧さえ感じております。循環器呼吸器病センターにおける医師不足は、経営の観点からの心配だけではなく、より重要なことは、県民の期待する医療の提供という県立病院の存在意義が果たせないことであります。
 また、病院の機能が十分に果たせなくなる原因として、医師不足だけでなく、近年、看護師不足も議論となっております。県立の五病院が高度で専門的な医療に特化し、県民の期待にこたえ、地域医療に継続して貢献していくためには、高機能な医療機器を整備することや経営改善の努力はもちろん重要なことでありますが、医師や看護師などの医療現場で働く専門家の確保育成も大切なことであります。
 そこで、病院事業庁長にお尋ねをいたします。
 安心・安全を求める県民の期待にこたえ、経営改善を進めながら、県立の五病院が高度で専門的な医療を提供していくためにどのように取り組もうと考えているのか、お伺いをいたします。
 次に、がん対策についてお尋ねをいたします。
 本県では、平成十八年三月に策定した新しい政策の指針において、平成二十七年までの間に取り組むべき八つの基本課題を掲げ、戦略的、重点的な政策の方向性を示しております。
 そのうちの一つに、がん克服フロンティアあいちの推進があり、予防と治療の両面にわたる全国有数の先進的ながん対策を推進することとなっております。また、七月に公表した年次レポートでは、県がんセンターの診療機能の充実・強化が掲げられております。
 本年二月の県議会では、我が公明党の代表質問に対して、本県におけるがん医療の均てん化については、県がんセンターが中核となってしっかりと取り組むという知事の力強い決意をお示しいただきました。
 県がんセンターは、都道府県で初めて昭和三十九年に病院と研究所を併設するがん専門施設として設置され、我が国における主要ながんセンターの一員として長年にわたり、がんの診断、治療、予防並びに研究をリードしてまいりました。
 また、平成十六年の日本経済新聞社のがん治療の実力病院全国調査では、がん治療成績において第一位という高い評価を受けております。
 県がんセンターには、高度な診断・治療装置が整備されていることも全国に誇れる点であります。平成十八年五月に導入されたトモセラピーは新しい放射線治療装置で、従来の装置と比較すると、がん病巣だけをねらい撃ちする機能は格段に向上しております。
 今年度はさらに血管造影検査治療システムが更新され、通常の血管造影及びCT検査単独では検出することが困難な腫瘍も明瞭に映し出すことができるようになると聞いております。
 本県においては、がん医療の均てん化の面でも、県がんセンターの中央病院を初めとするがん診療連携拠点病院の整備に積極的に取り組むことにより、どこに住んでいてもだれもが等しく高度ながん医療とがんに関する相談支援を受けられる体制が着実に構築されつつあります。
 このように、本県におけるがん対策は既に全国でも先進的であると自負するところでありますが、がん撲滅先進県を目指すには、現在の地位に満足することなく、県がんセンターを有効に活用することにより、さらにそのレベルを向上させることが重要であると考えております。
 そこでお尋ねをいたします。
 がん撲滅先進県を目指す愛知県として、今後策定する愛知県がん対策推進計画をどのようにして愛知らしい計画としていかれるのか、また、県がんセンターの機能をどのように活用して今後のがん対策を進めていかれるのか、お尋ねをいたします。
 質問の第五は、少子化対策の推進及び福祉・介護人材の育成についてであります。
 我が党は、結党以来、児童福祉の充実を訴えてまいりました。その結果、平成十九年度におきましても、児童手当の乳幼児加算、妊産婦の無料健診の拡充、育児休業給付の拡充、特定不妊治療費助成の支給額の拡充など、子育て支援のための多くの施策を実現したところであり、子供を育てやすい環境づくりに積極的に努めているところであります。
 本県の昨年の合計特殊出生率は一・三六と一昨年よりも〇・〇二増加し、全国よりも若干上回っている状況にはありますが、全国と同様、確実に少子化が進行していくことが予想されております。
 少子化が進行いたしますと労働力人口が減少いたしますので、経済成長にマイナスの影響を及ぼしてまいります。また、今後、高齢者が増加をしてまいりますので、年金を初めとする社会保障における現役世代の負担がますますふえてまいります。
 さらには、子供同士が切磋琢磨し、社会性をはぐくみながら成長していくという機会が減少したり、地域の子供が集まるイベントがなくなり、地域社会の活力維持が困難となるなど、社会全体へマイナスの影響を及ぼす可能性が大いにあるわけであります。
 そこで、少子化の進行の流れを変えることが重要な課題であり、これからも少子化対策をより一層推進していく必要があることは言うまでもありません。
 我が党は、子育てを社会の中心軸に位置づけ、社会全体で子育てを支援するチャイルドファースト社会、言いかえますと、子供優先社会を構築することがぜひとも必要であると考えているところであります。
 さて、本年四月から愛知県少子化対策推進条例が施行されました。この条例の前文には、だれもが安心して子供を生み育てることができ、その喜びを実感し、次代の社会を担う子供が健やかに成長することは私たちの願いであるということが盛り込まれており、これはチャイルドファースト社会と同じ趣旨であるものと理解をしております。こうしたことから、今後はこの条例の内容に沿って少子化対策を積極的に推進していただき、その結果として、少子化の流れをぜひとも変えていただきたいと思います。
 そこでお尋ねをいたします。
 今後どのように少子化対策を進めていかれるのか、知事の意気込みをお伺いいたします。
 次に、福祉・介護人材の育成についてであります。
 厚生労働省大臣官房統計情報部の介護サービス施設・事業所調査及び社会福祉施設等調査報告の調査によりますと、平成十七年の福祉・介護サービスの従事者数は三百二十八万人で、平成五年の七十一万人と比べ約五倍の伸びとなっており、特に高齢者に関連するサービス分野では約十二倍と高い伸びを示しております。
 こうした高い伸びを示しているにもかかわらず、現状では、介護施設の労働環境は大変厳しい状況にあり、例えば平均年収を見ると、全労働者の平均が四百五十三万円であるのに対して、施設介護職員の男性では三百十五万円、同じく女性では二百八十一万円となっており、介護職員の年収の低さがうかがえます。
 また、職員の一年間の平均離職率を見ましても、全産業の一七・五%に対して、訪問介護員と介護職員を合わせた離職率は二〇・二%と約三ポイント高くなっております。
 一方、さきに述べました介護サービス施設・事業所調査によりますと、介護の仕事を選んだ理由は、働きがいのある仕事であるとか、自分の能力、個性、資格が生かせる仕事であるという理由で職を選んでおります。
 この調査結果からうかがえることは、養成施設などで介護を学び、意欲に燃え、職についた若者などが数年のうちに介護の現場を去っていくという現実であります。この福祉・介護の人材不足の中でこういった使命感を持った人たちが、やはり介護の仕事をやってよかったと生きがいを持って続けてもらい、定着を図ることが必要ではないでしょうか。そのためには、福祉・介護事業者が職員に対して研修を実施し、自己を研さんすることでやる気を起こさせる努力が必要であると思います。
 また、例えば、福祉サービス第三者評価においては、職員の研修等の実施が評価項目となっておりますので、こうした評価や県の指導を通じての資質向上も期待したいと思います。
 こうした状況を踏まえ、今後ますます拡大していく福祉・介護ニーズに対応していくためには、国、県、福祉・介護サービスの経営者並びに関係団体が十分に連携して、やりがいのある職場づくりを目指し、それぞれが必要な措置を講じ、努力していくことが大変重要であると思います。
 そこでお尋ねをいたします。
 県では、福祉・介護人材の確保や資質の向上を図るため、どのような方策をとっているのか、お伺いいたします。
 また、今後どのように取り組んでいかれるのか、お伺いいたします。
 質問の第六は、地震対策についてであります。
 国の地震調査研究推進本部が平成十九年一月一日を基準日として地震の発生確率を公表しておりますが、今後三十年以内の東海地震の確率は八七%、東南海地震は六〇から七〇%となっております。
 災害から住民の生命、身体及び財産を守ることは行政の最も重要な役割の一つでありますが、大規模災害が発生した場合、どうしても県民や地域社会における防災活動が不可欠となります。
 これからの防災対策においては、県民がみずからを災害から守る自助と、地域社会がお互いを守る共助、国や地方公共団体等行政の施策としての公助、この三つの力が連携することが必要であります。すなわち、行政のみならず、県民、企業、地域のコミュニティーや自主防災組織、NPOなど、さまざまな主体が防災対策に取り組むことが必要であります。
 特に、地震は突発的に発生し、その被害は広範囲に及ぶことから、初期消火、救出救助など、発生直後の自助、共助の果たす役割は極めて重要であると考えます。
 ことしに入ってから、三月に能登半島で、四月に三重県中部で、さらに、七月には新潟県中越沖など身近な地域で大きな地震が発生いたしました。愛知県も他人事ではなく、東海地震や東南海地震などの大規模な地震がいつ起きてもおかしくないと言われており、地震被災地の状況を伝えるマスコミ報道を見るにつけ、本県は地震が発生した場合への備えは大丈夫なのか、不安を感ずるところであります。
 住宅の倒壊を防ぐための耐震診断や耐震改修が進んでいるのか、地域住民の助け合いによる高齢者などの安否確認ができる体制があるのかないのか、また、避難所での避難住民への迅速な対応ができるのかできないのかで地震被害の軽減や発災後の対応が大きく変わってまいります。
 そこでお尋ねをいたします。
 愛知県では、住宅の耐震化や災害時の要援護者対策についてどのように取り組まれておられるのか、お伺いいたします。
 質問の第七は、道路及び橋梁の維持管理についてであります。
 道路、河川を初めとする社会資本は、戦後の我が国の経済成長を支え、国民生活の安全性と豊かさの向上という大きな役割を果たしてまいりました。その国民生活を支えてきた社会資本の多くが高度成長期に建設され、まさにこれから本格的に社会資本の維持更新の時代を迎えようとしております。
 社会資本の中でもとりわけ道路は、社会経済活動や地域の交流、日常活動の基礎となるものであり、この維持管理を適切に行っていくことが極めて重要であり、知事の掲げられたマニフェストの安心・安全を支える大きな柱となるものであります。
 最近、私の地元では、路面の穴ぼこ、部分的に補修した跡、わだち等が目立ち、車の走行に危険なだけでなく、お年寄りや子供が道路を横断する際に転んだりしないかと心配をしております。県が管理する道路は、地域住民にとってはまさに生活道路となっており、その安全確保は一日たりとも欠くことのできないものであります。
 しかしながら、その生活道路が傷んでいる、危険である、何とかならないかという県民からの声をよく耳にするようになりました。そんな相談を受けるたびに、交通事故を防止するためにも早急に対応しなければならないと感じております。
 本県が管理する道路延長は約四千六百キロメートルに及び、苦しい財政事情であることは理解をしておりますが、私たちが安心して通れる道路の確保は県としての使命であると考えます。
 近年では、地域住民が積極的に道路の草刈りや清掃活動に参加するアダプトプログラムが全国的にも行われるなど、道路への関心の高まりも感じられます。県だけで維持管理するのではなく、もっと地域住民と一体となり、地域に親しまれる道路として住民と一緒になって維持管理を行っていく、そういう時代ではないかと感じております。
 今後、橋梁などの道路ストックは高齢化がさらに進み、その維持更新に一層の費用が必要となることが予想されます。しかし、限られた予算の中で社会資本の維持管理を適正に行っていくために、こうした住民協働の推進やこれまでの対症療法的な維持管理からの転換を図る時期に来ているのではないかと考えております。
 そこでお尋ねをいたします。
 今後、高齢化する道路、橋梁などの社会資本の維持更新の時代を迎えるに当たって、県はどのように維持管理を展開していくのか、お伺いをいたします。
 質問の第八は、知の拠点計画についてであります。
 この地域の産業界は、自動車産業を中心に大変好調な状況にあります。引き続き物づくりにおいて世界をリードしていくためにも、次の産業展開を見据えた新技術開発への取り組みは決して手を抜くことは許されません。
 現在、愛知県では、この地域の次世代物づくり技術の創造をねらいとした知の拠点づくり計画を進めており、ナノテクを次世代物づくり技術のための基盤技術の核として位置づけております。知事も、ナノテク研究のためには、原子・分子レベルの計測分析技術が重要な要素となるとの認識を持っておられ、昨年十二月議会の代表質問において、シンクロトロン光利用施設を知の拠点に誘導・整備することを表明されました。
 シンクロトロン光利用施設は、従来の分析機器の百万倍以上とも言われる非常に強力な光を用いて、物質の構造や元素の種類を原子、分子の単位で解析できる施設と聞いております。世界最先端レベルの計測分析施設であるシンクロトロン光利用施設と県が整備する先導的中核施設の高度な計測分析装置が知の拠点に連携して整備されることは、研究開発を推進する上で大きな力になることは間違いありません。
 しかしながら、これまでの国内シンクロトロン光利用施設は、大学を中心とした学術研究に重点を置いており、産業界、特に中堅・中小企業からするとかなり敷居が高いと聞いております。産業界の大部分は中堅・中小企業が占め、新技術・新製品開発に日々取り組んでおります。この中堅・中小企業の技術力が向上してこそ、物づくり地域としての地位を確固たるものにできると考えております。
 ぜひ、中堅・中小企業への普及啓発、利用促進に取り組んでいただきたいと思っております。それがこの施設を県が誘導する意義であり、我が党も大変期待しているところであります。
 また、この施設は計測分析のレベルとしても非常に高度であることから、大学研究者の支援が必須の要素であり、産業界、大学との連携があって初めて順調な整備、運営が可能になるのではないかと考えております。
 そこでお尋ねをいたします。
 さきに知事は、産業界、大学等と協力しながら検討、調整を図ると答弁されましたが、シンクロトロン光利用施設の誘導、整備に向けた現在の状況をお尋ねいたします。
 そして、この施設の実現に対して、地域の産業界からはどのような期待があるのか、また、施設の産業利用、特に中堅・中小企業への普及啓発、利用促進に対して、今後、知事はどのように取り組まれるおつもりか、お伺いいたします。
 最後の質問は、多文化共生社会づくりの推進についてであります。
 本県の外国人人口は年々増加の一途をたどっております。七月に法務省から発表された在留外国人統計によれば、国民の約三十五人に一人が外国籍の方という状況であります。
 中でも、この地域は製造業が盛んな地域でありますので、ブラジルを初め南米地域からの就労を目的とした日系人が多数居住しております。私の地元豊橋市では、一万二千人余りのブラジル国籍の方が暮らしており、県内一という状況であります。こうした外国人労働者は、短期間滞在の単身者が主であった当初の出稼ぎの状態から、今や、滞在が長期化し家族を呼び寄せるなど定住化が進み、永住資格を取得する方も増加していると聞いております。
 人口減少や産業経済活動のグローバル化により、今後も外国人労働者の増加や定住化の進展が予想される中で、外国人を一時的な滞在者ではなく、ともに暮らし、地域をつくっていくパートナーとして受け入れることが重要であると考えております。
 地域では、町内会や自治会あるいはボランティア団体などによるさまざまな活動が行われておりますが、こうした活動への外国人の参加はまだ少ないと聞いております。日本語能力の不足から近隣住民とコミュニケーションを十分図ることができず、積極的な交流が進んでいないようであります。しかしながら、外国人自身も日本語の習得に努め、地域社会の一員であると認識し、地域住民との交流や地域の活動に積極的に参加する姿勢が必要であると考えております。
 言語、文化、生活習慣などが異なる日本人と外国人がこの地で暮らしていくには、地域住民との交流を図りながら、互いの文化や考え方などについて相互理解を深め、ともに暮らしていくという共生の意識がないと、だれもが安心して生活していくことは難しいと感じております。
 県としても、まず、日本人である地域住民の声に耳を傾けながら、外国人が地域社会で自立して日本人と共生していくことができるよう、子供も含めた日本語の学習支援や生活面全般にわたる支援を総合的に行うべきであると考えております。
 また、外国人労働者を雇用あるいは受け入れしている企業に対しては、雇用者、使用者としての社会的責任を認識し、外国人労働者の労働環境の安定や日本語の習得などに積極的に心がけるよう、行政としても働きかけていく必要があるのではないでしょうか。
 そこでお尋ねをいたします。
 外国人と愛知県民がともに学び、ともに働き、ともに安心して暮らせる多文化共生の社会づくりに向けてどのように取り組んでいかれるのか、知事の御所見をお伺いいたします。
 以上、県政各般にわたる諸問題についてお尋ねをしてまいりました。積極的かつ熱意あふれる答弁を期待いたしまして、私の壇上での質問を終わります。御清聴ありがとうございました。(拍手)



◯知事(神田真秋君)
 お答えをいたします。
 県税収入の見通しであります。
 県税収入は、現時点では、おかげさまで順調に推移をいたしております。しかしながら、これは先般の新聞報道でございましたけれども、上場企業の連結営業利益に占める海外比率がこの三月期で初めて三割を超えたと報じられており、企業の海外での収益拡大基調が続いております中で、先般の住宅融資問題に端を発したアメリカの景気不安など、先行きが大変心配でございます。
 したがいまして、税収につきましては、今後の申告状況などを十分分析をし、本年度の税収を慎重に見きわめてまいりたいと考えております。
 また、個人県民税への税源移譲額でございますが、当初予算で一千二百四十億円を見込んでおりましたが、市町村の賦課状況から見まして、若干上回る額を確保できる見込みでございます。
 続いて、財政健全化に向けた今後の取り組みについてでございます。
 地方公共団体の財政状況を判断する上で、地方債残高などの将来の負担に関する指標が重視されてまいりました。本県の県債残高と公債費の状況は、本年二月に公表いたしました財政中期試算で、県債残高は平成二十年度以降も緩やかに増加を続け、平成二十二年度末には三兆九千億円と見込まれる一方で、公債費は二千八百億円前後で推移すると見込んでいるところでございます。
 こうしたことから、県債を財源として活用する場合には、その償還額、すなわち公債費が財政構造のさらなる硬直化を招かないように十分留意する必要があると考えておりまして、これまでも県債の新規発行につきましては、平成十九年度まで四年連続で前年度を下回るよう抑制してきたところでございます。
 今後も引き続き県税収入や公債費の動向を見きわめ、極力、新規発行を抑制することで財政の健全化につなげてまいりたいと存じます。
 また、当面の課題である本年度の繰入運用四百億円の解消につきましては、年度の中間でもございまして、現時点でその見通しを申し上げることはなかなか困難でございます。当面は、経費の効率的な執行により財源の確保に努めるとともに、今後の県税収入の動向によりさらなる財源の確保が可能になった場合には、臨時の財源対策四百億円の解消を最優先で取り組んでまいります。
 次に、地方機関の見直しについてでございます。
 県民の皆様方からの相談機能についてでございますが、県民生活プラザで県政相談や消費生活相談などを行うとともに、保健所を初め各分野の地方機関で専門相談を実施しているところでございます。
 今回の見直しに当たりましては、県民の皆さんが求める相談内容に最も適した機関を探すことができるよう、新たにホームページに市町村や国の機関を含めた相談窓口一覧を掲載するなど、情報提供を充実いたします。また、相談先の総合案内を県民生活プラザが行っていることをしっかりPRをいたしますとともに、相談員の資質の向上に努めるなど、相談のコーディネート機能の強化を図ってまいります。
 さらに、保健・福祉分野につきましては、心の問題や児童虐待の増加に対応し、児童相談センターの増設、保健所等の体制の強化、市町村や民間を含めた相談関係機関のネットワークの有効活用など、専門相談の機能の強化を図ってまいります。
 県民の皆様方からの相談に対しましては、まずもって、窓口がわかりやすいこと、その上で、対応が親切で迅速であること、そして、何よりも実際に相談が解決すること、この三点が大変重要であると考えております。それぞれの点について常に向上が図られるよう努めてまいります。
 次に、設楽ダムについてでございます。
 東三河地域の長年の悲願でございます設楽ダムの建設でございますが、これは国が直轄事業として取り組んでいるものでございまして、また、県政にとりましても最重要課題の一つでございます。
 その設楽ダムの着工が間近に迫ってまいりましたが、まだまだ多くの課題がございます。とりわけ移転を余儀なくされる水没者などの方々に対する移転地の確保は最優先の課題でございまして、事業者である国に対し、地域の理解が得られるよう対応を求めるとともに、私ども県といたしましても適切に対策を講じていく必要があると考えております。
 そこで、県におきましても、水没者などの意向把握に努めるとともに、地域の活力を保ち続けるために一人でも多くの方に設楽町内にとどまってほしいとする地元の意向にもできる限り配慮をし、町内の移転地の確保や提示に向けて、現在、努力をしているところでございます。
 また、振興対策につきましては、現在、設楽町において要望をまとめる検討がなされております。これらの事業につきまして、県及び受益者である下流市町が応分の負担をすることを前提といたしまして、その範囲や規模などを整理の上、水源地域対策特別措置法に基づく水源地域整備計画や、豊川水源基金による振興計画として取りまとめてまいりたいと考えております。
 また、このこととは別に、下流市町が設楽町内に上下流交流の拠点施設を設置することにつきまして、その具体化に向けた検討が進められておりますので、県としても協力を申し上げたいと思っております。
 いずれにいたしましても、水源地域である設楽町の振興は重要な課題でございますので、下流市町にも引き続き働きかけをしながら、移転地確保とあわせ、県としても努力をしてまいりたいと存じます。
 がん対策についてでございます。
 まず、愛知県がん対策推進計画につきましては、第一回のがん対策推進計画委員会を今月の十日に開催をいたしました。その際、委員からは、患者や家族の視点に立ったがん対策の実施のほか、中部地区初になる重粒子線治療施設を誘致することや、小児がんの方への治療後の生活の支援をすることなどについて、大変貴重な御意見をいただきましたことから、国の計画よりも踏み込んだ目標を盛り込み、実効性のある計画をつくっていきたいと考えております。
 次に、県がんセンターの機能の活用という点でございますが、豊富な人材を有する中央病院は、県内唯一の都道府県がん診療連携拠点病院として、化学療法や放射線療法、さらには、緩和ケアなどに関する研修を実施することによりまして、高度ながん医療の専門家を多数育成したいと考えております。
 また、他の医療機関から診断や治療が困難な症例に関する相談や難治性がんの治療を引き受けるなど診療支援も行い、県内医療機関のがん診療能力を確実にレベルアップさせるとともに、病院間の診療連携も強化いたします。
 さらに、併設の研究所における先進的ながんの疫学や予防研究の成果を活用しまして、科学的根拠に基づいたがん予防対策を推進することにいたします。
 県といたしましては、だれもが安心して納得できる全国トップレベルのがん医療が受けられるよう、しっかりと取り組んでまいります。
 次に、少子化対策についてでございます。
 この問題は、二十年後、三十年後の我が国の運命を決する極めて重要な問題でございまして、本県におきましても、県民の皆様方の安心にとって最優先の課題と位置づけて取り組むべきものと認識をいたしております。
 しかしながら、ある施策を実施すれば必ず成果が上がるというような特効薬的なものはございません。また、すぐに効果が出るという即効薬のようなものもございません。さまざまな施策をきめ細やかに行っていくしかないと考えております。
 そこで、本県の少子化対策の屋台骨となる愛知県少子化対策推進条例をこの四月から施行したところでございますが、具体的な事業といたしましては、結婚を希望する若者への支援や一般不妊治療費への助成などを議会でもお認めをいただき、さらに、この議会には、第三子以降児の保育料の無料化について補正予算などをお願いしているところでございます。
 先週開催されました官民連携子育て支援推進フォーラム、このシンポジウムでは、私も、経済界、労働界の代表と「働き方の見直し」をテーマに意見交換をさせていただいたところでございます。仕事と家庭生活を両立できる雇用環境づくりは、企業の経営戦略にとりましても、また、働く者としても重要でありまして、ひいては少子化の流れが変えられるということで、私ども、意見の一致を見たところでございます。
 さらに、十一月には、条例に基づく愛知県少子化対策推進会議を開催いたしまして、子育て応援宣言を採択し、経営者団体、労働団体、子育て支援団体等が一体となって、強力に少子化対策に取り組んでまいりたいと存じます。
 続いて、福祉・介護にかかわる人材の育成という点についてでございます。
 福祉・介護の現場において、介護をされる方の御労苦は大変なものがございます。職員の使命感に負うばかりでは、介護の現場を支えるのは困難な状況に来ているのではないかと、私どももそのように認識をしているところでございます。
 本県では、愛知県社会福祉協議会に設置をしております福祉人材センターにおきまして、求職相談とかインターネットで求人情報を発信するなどとともに、人材の発掘の機会を拡大するために、福祉の就職総合フェア、これを今年度は名古屋に加え、豊橋でも開催をしております。また、現場職員に対し、職務や専門性に応じた研修を実施するなど、人材の確保や資質の向上に努めているところでございます。
 とはいえ、福祉・介護現場では依然として大変離職率が高く、事業者の方々は人材の確保に苦労しておられるのが現実でございます。
 こういった状況をとらえ、国は、八月末に福祉・介護人材確保のための指針を告示したところでございます。県といたしましては、まずは経営者などにもこの指針を周知し、雇用する立場から適正な給与水準の確保を初めとした労働環境の改善に向けて働きかけをしてまいります。また、県が実施する研修内容のさらなる工夫を行うなど、質の高い人材の確保や定着対策にしっかりと取り組んでまいりたいと考えております。
 地震対策についてお答えを申し上げます。
 まず、耐震化についてでございますが、地震被害の最大の要因である住宅の倒壊を防ぐための耐震化対策につきましては、第二次地震対策アクションプランにおきまして最重点事業に位置づけ、木造住宅の耐震診断、耐震改修費の補助や、来年度を目途に安価な耐震改修工法の実用化に向けて、今、鋭意取り組んでいるところでございます。
 また、本年度の新たな取り組みといたしまして、これは名古屋市を初め五市において旧耐震基準の木造住宅が多い地域で耐震診断を呼びかけますローラー作戦を実施し、住宅の耐震化をさらに促進してまいりたいと考えております。
 次に、災害時の要援護者の支援対策についてでございますが、市町村が日ごろから地域と連携して要援護者の情報を共有し、災害時の安否確認や避難支援などが迅速に行うことができる体制の整備を推進してまいりました。
 最近の地震災害につきましては、要援護者への支援が大きな課題になっておりますことから、本年八月に市町村ごとの取り組み状況や課題など聞き取り調査をいたしましたので、その結果を十分分析して、先進的に取り組んでいる事例を情報提供するなど、災害時の要援護者支援対策の一層の促進と充実を図ってまいります。
 道路や橋梁の維持管理についてでございます。
 道路は、県民の皆様方の安心・安全な日常活動の基盤となっているものでございますので、道路パトロールと的確な修繕、さらには住民協働の推進により、常に良好な状態を保つよう努めているところでございます。
 しかし、御指摘いただきましたように、道路施設はその多くが高度経済成長期に建設をされてきたものでございまして、特に橋梁につきましては、本県が管理する約四千橋のうち既に半数が建設後三十年を超え、五十年を超えるものも七百橋に達するなど道路施設の高齢化が進んでおりまして、まさに維持管理の時代を迎えているところでございます。
 こうした中、本県では、アメリカのミネソタ州で発生をいたしました落橋事故を重く受けとめ、今議会に補正予算をお願いし、高齢化の進んでいる橋梁を中心に緊急点検を行いたいと考えております。
 また、一方、施設の維持管理を効率的に行うために、予防保全の視点を取り入れ、ライフサイクルコストの最小化や施設の長寿命化に取り組むなど、今後とも元気な愛知の基盤となる道路施設の的確な維持管理に努めてまいる所存でございます。
 次に、知の拠点計画についてお答えを申し上げます。
 我が国を牽引する本県の物づくり産業の活力、これを維持発展していくその力の源泉になりますのは、科学技術への取り組みによるイノベーションであります。これを絶えず生み出すために、知の拠点づくりを本県の最重要課題として推進しているところでございます。この知の拠点では、次世代物づくり技術を創造、発信する拠点として、ナノテクを核に共同研究開発に取り組みたいと考えております。
 その際に、最先端で重要な研究施設として産学から期待が高まっておりますものが、シンクロトロン光利用施設でございます。その活用成果としては、例えば自動車産業を例にとりますと、寿命の長い排ガスの浄化触媒の開発などにつながって、コストの削減や環境の改善につながったと、そんなすばらしい実績もございます。
 こうしたシンクロトロン光利用施設の整備に向けまして、昨年十二月から、地域の産学行政の関係者から成りますワーキンググループを設けまして、これまで八回にわたり検討を重ねてまいりました。その結果、企業の方々が利用しやすく、物づくりに対応できる施設の方向性がようやく見えてきたところでございます。
 また、この施設は高度な計測分析施設でありますことから、使い方がわからない企業も多いため、地域の大学が協力をし、いわば大学連合として利用者支援のための専門的人材を出してもらう方向での検討も進行中でございます。
 一方、施設整備には多くの資金が必要になりますので、産業界には資金面での支援をお願いしていかなければならないと考えております。引き続き早期実現に向けまして、産学行政の合意形成に努めていく所存でございます。
 次に、産業界の期待及び普及啓発についてでございます。
 これまで百社を超える企業に対し、詳細なアンケート調査やヒアリングを実施してまいりました。その中で、地域の産業界からは、早期実現を望む声が寄せられております一方、最先端の計測手段でありますことから、御指摘のように、中堅や中小企業を中心に、自社の研究開発や評価分析にどのように活用できるのかよくわからないという声もございました。したがいまして、中堅・中小企業への利用促進につきましては、活用事例を示しながら、普及啓発事業を展開していくことが重要だと考えております。
 そこで、本県では、この十一月に、日本最大のシンクロトロン光利用施設である兵庫県にございますSPring─8と共催で産業利用者を開拓するため、産業利用事例の紹介や技術相談を行う講演会、相談会を開催するなど、今後ともさまざまな機会をとらえ、普及啓発に努めてまいりたいと考えております。
 私から最後のお答えになりますが、多文化共生社会づくりについてでございます。
 国籍や民族などの違いにかかわらず、だれにとっても暮らしやすい地域環境をつくっていくことが極めて重要でございます。
 このため、有識者会議から昨年度提言をいただきました多文化共生社会づくりの方向性などを踏まえまして、今年度、地域の声なども配慮しながら、今後五年間の行動計画の策定に取り組んでいるところでございます。
 とりわけ、子供の日本語学習支援や外国人労働者の適正雇用を促進する憲章の普及、多文化ソーシャルワーカーのさらなる養成、活用など、在住外国人の方が地域社会で自立、共生できる環境づくりを重点に検討を鋭意進め、順次実行に移してまいりたいと考えております。
 また、その推進に当たりましては、市町村や企業、NPOなどとの連携・協働にも十分意を用いてまいりますとともに、いろいろな制度のかかわりがありますので、国に対しましても、必要な法制度の整備など、引き続き強く要望してまいる所存でございます。
 以上、答弁といたします。



◯病院事業庁長(外山淳治君)
 県立病院の運営につきまして、循環器呼吸器病センターの医師不足と関連してお尋ねをちょうだいいたしました。
 循環器呼吸器病センターにおける医師不足の本質は、全国の中規模地方自治体病院に広がっておる極端な医師不足のそれと同一であると深刻に受けとめております。
 また、看護師不足についても、特にがんセンター中央病院では、がん医療の強化、患者増により看護業務の厳しさが増しており、看護師確保に難渋する事態となりました。
 病院事業庁としては、この事態に対応しまして、医師を含めて医療職員を五病院の枠を超えて一括管理し、それを弾力運用することによりまして、病院間の相互扶助を深め、医師不足の影響の軽減、人材の効率運用を図る自助努力を行っております。
 医師、看護師の過酷な勤務実態に目を向け、これまでの経営改善の成果が一歩後退してもやむなしとの思いで、医師を中心とする医療現場の職員が生き生きと働ける魅力ある職場づくりに一層重点を置いてまいりたいと考えております。
 県立病院の運営は、医師、看護師の確保があってこそ可能であるとの原点に立ち戻りまして、医師、看護師の体制について検討を進めてまいる所存でございます。




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